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TASCのみ使用時のORPの挙動について
当プラグインのATOモードには「メトロ総合プラグイン互換モード」として、「ORP に沿う速度制御」が実装されている。
しかし、当プラグインをTASCモードで使用した場合、ORPに沿う速度制御がなされず、 ORPパターンに接触しないよう、手動制動をかけなければならない。
実際に当方でしゃとる氏謹製の「地下鉄銀座線」のA線を当プラグイン対応改造を行ったところ、 渋谷駅進入時にTASCモードではORPパターンに接触してしまい、非常ブレーキが動作してしまう。 ※ATOモードでは「メトロ総合プラグイン互換モード」として31番地上子を認識し、パターンに接触する前に自動制動が働く。
ところが実際の前面展望動画を確認すると、TASC制御時にORPパターンが発生した場合、 手動制動をかけることなく、TASCブレーキのみでORPに沿う速度制御を行っている様子である。
参考動画①・東京メトロ銀座線の場合 (TISを見るとORP設置駅の渋谷駅はTASC表示のみで、手動制動をかけていない)
参考動画②・東急東横線の場合 (ORP設置駅の自由が丘駅では開扉直前に転動防止制動をかけるマスコン操作音のみで、ORPパターン発生時は操作していない。)
というわけで、TASCモードでもORPに沿う速度制御ができないだろうか?
確かに、TASC が ORP に引っ掛かっていたのでは間抜けすぎるのでどうにかしたい。 が、仕様をどうするか考えだすとあまり簡単な話にならない。
TASC の目的は目標停止位置に自動で停止することであり、それを実現する方法として「目標位置に向かって減速パターンに沿って減速する」という動作を実装している。一方、ATO の一部として搭載している ORP 対応の目的は ORP の照査に引っ掛からないようにすることであり、それを実現するために「ORP のパターンよりやや低い減速パターンに沿って減速する」動作を実装している。この二つのパターンが一致しているなら話は速いが、一般論としてはこれらは一致しないので、そのようなときにどういう動作をするのが適切かを考えなくてはいけない。
現実的にあり得そうな例としては、10 両分の長いホームに 8 両編成で進入する場合なんかに、ORP の照査パターンはホーム端ギリギリで収束するが TASC 停止位置はそれより 10 メートル以上手前にあるみたいなケースが考えられる。停止位置が十分に手前にある場合、そもそも ORP のことを気にせずに従来通り TASC を動作させても問題なく停車できる可能性が高い。一方、停止位置がそこまで離れていない場合は、通常通りだと列車の動きが ORP 照査の一部に引っ掛かる可能性があり、必要な減速のパターンが複雑化する。
また、ORP があるところでは ORP 照査が始まる前に ORP 照査パターンの開始速度以下まで減速しておく必要があるので、bve-autopilot ではそのためにもう一つ減速パターンを用意している。TASC を ORP に対応させるにはこれとの兼ね合いも考えなくてはいけない。
現状の bve-autopilot の設計では、TASC と ATO はほぼ完全に独立して動いていて、ORP の存在は TASC の動作に影響を与えない。ただ、TASC と ATO を同時に動かすことで、目標位置に停止することと ORP 照査に引っ掛からないようにすることの両方が達成されている。これにならうと、ORP に対応した減速をするには ATO (の一部) を有効化する方向に進まざるを得ず、ATO を切って TASC のみをオンにするモードの意味が変わってくるので、慎重にならざるを得ない。また、この方向性では、停止目標なしで ORP のみが設置されているときにどうするかみたいなことも考える必要が出てくる。
が、そもそも現実の車両で ATO のない TASC が上のような複雑な機構を実装しているともあまり思えないので、もっと単純な仕組みで目的を達成することを考えた方が良いのかもしれない。 とりあえず、「手動でブレーキを操作せずに TASC の動作だけで ORP に引っ掛からずに停車したい」という要件を実現することだけを考えると、現状では目標減速度設定地上子を使って減速度を低めに設定しておくのが手っ取り早いと思われる。